警備員と警察官は何が違うのか
はじめに
警備員と警察官は名前も雰囲気も似ていますが実は全然違います。
この違う部分をわかる方は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は警備員と警察官にはどのような違いがあるのかについてみていきます。
警備員の就職先は「民間企業」です
警備員とは、さまざまな場所で警備を行う仕事のことを指します。
一般的には危険から人々を守る仕事というイメージですが、警備員の仕事はそれだけではありません。
例えば、工事現場での交通誘導、商業施設での館内案内、機械式警備の保守点検など、警備員が担う仕事内容は様々です。
常時周囲に気を使いつつ、いざという時は危険に立ち向かわなければならないので緊張感のある仕事になります。
しかし、その分やりがいや社会的意義のある仕事だと思います。
警備員になる場合、警備を取り扱う民間の企業に就職するのが基本となります。
警備会社は個人、企業、団体から警備の依頼を受け、それを自社で働く警備員に振り分けて現場へ派遣します。
ちなみに、自社の会社の門番を行い給与の支払いが発生するという場合がありますが、これは他社からの依頼ではないため警備業にはあたりません。
現場では指示された業務を行います。
また、必要であれば不審者や暴漢を取り押さえる場合もあります。
ただし、民間の企業に勤めていますので、警備員はあくまでも会社員であり一般人です。
このため、不審者や暴漢を逮捕することはできません。
取り押さえた場合は、すぐ警察に連絡し、身柄を引き渡さなければいけません。
警察官は「公務員」です
警備員は民間企業に勤める会社員ですが、警察官は国や地方自治体に勤める公務員です。
公務員になるには行政機関が行う公務員試験に合格する必要があります。
また、公益性の高い仕事ですので、副業はNGです。
そのため、民間企業で警備員をしながら警察官として働くということは認められていません。
警察官の特徴は、警察官職務執行法により法律を守らない人を逮捕する権限が認められていることです。
これ以外にも、犯罪者の取り調べ、事件の捜査、武器の使用、現場での一般人に対する協力命令など、いろいろな権限が認められています。
これらは、人々の命や財産を守り、公安を正しく維持するという任務が法律で定められているためです。
特別な権限とあわせて、安全を守るという仕事への責務がより重いことになります。
警察官と警備員では業務内容が違います
警察官の業務は、犯罪捜査、防犯指導・交通安全指導、安全パトロールなどを行い、安全な社会を守ることです。
警備員の業務は、施設や現場で人や財産の警備・警護をすることです。屋内外問わず人が通ったり集まったりするところで人々の安全のために働きます。
警察官は業務を遂行するために以下のような権限を与えられています
▸職務質問をする権限(警察官職務執行法第2条第1項)
▸武器を使用する権限(警察官職務執行法第7条)
▸被疑者への出頭要請及び取調権(刑事訴訟法第198条)
▸逮捕権(刑事訴訟法第199条)
▸犯罪捜査のための捜索・差押・検証(刑事訴訟法第218条)等
▸緊急自動車の優先通行権(道路交通法第39条等)
▸特定区域への通行制限権(道路交通法第6条第4項)
▸災害時の通行禁止区域における車両その他の物件の移動命令や破損の権限(災害対策基本法第76条の3)
▸現場における一般人に対する協力命令権(警察官職務執行法第4条第1項)
▸他人の家屋、土地に立ち入る権限(警察官職務執行法第6条第1項)
一方、警備員は民間企業で雇われている会社員ですので、警察官の持っているような権限はありません。
しかし、護身用具を所有する権限などは、警察署へ届け出を行なうことで一部の護身用具に限り所有することが可能な場合があります。
警察官と警備員の違いの例
警察官が行う「交通整理」と警備員が行う「交通誘導」は全くの別物になります。
警察官が行う交通整理は「信号」と同じです
警察官が行う交通整理は、信号と同じ役割を果たします。
これにより、警察官の指示に従わない場合、信号無視として反則切符を切られることになります。
警備員が行う交通誘導は「お願い」です
警備員が行う「交通誘導」はあくまでも「お願い」になります。
信号機のように止まらないといけない、進まないといけないといった権限はありません。
これにより、警備員が行った誘導で赤信号でも進めと指示されてドライバーさんが行ってしまった場合、信号無視になってしまいますので注意してください。
このように、警備員と警察官では認められる権限に大きな違いがあります。
いざ何かが起きた場合、解決に向けてスムーズに動けるのは強制力を持つ警察官です。
しかし、警備員が何もできないというわけではありません。
警備員のように制服を着て周囲を警戒する人がいるというだけでも、犯罪の抑制やとっさの判断に役立ちます。
似ているが違う警備員と警察官の制服
警備員は警察官と違うものの、外見は非常によく似ています。
特徴的な形の帽子やエンブレム、ダークカラーの制服やネクタイなど、パッと見だと警備員か警察官かわからないなんてこともあるのではないでしょうか。
警察官の制服は全国どこでもほぼ共通です。
しかし、警備員の制服は警備会社によりそれぞれ異なるはずです。
なのに、なぜほとんど同じような見た目になるのでしょうか。
これは、犯罪を未然に防ぐ効果があるからです。
警察官がそばにいるというだけで、悪いことをしていなくても緊張してしまう、といった経験は誰しもあるのではないでしょうか。
警察官を想起させる警備員がそこにいることで、心理的な面で犯罪の抑制に繋がります。
また、制服により周囲から警備員の存在を分かりやすくすると、火災や事故などが起こった場合に人々を誘導しやすくなるというメリットもあります。
しかし、警備員か警察官か見分けがつかないと互いの仕事に支障が生じてしまうため、警備員と警察官の制服はよく見れば見分けられるように違いがあります。
全く同じだと警備員が警察官のふりをして犯罪を起こす可能性も考えられるため、似てはいますが同じ制服にはしません。
警備会社で貸与される制服は都道府県の公安委員会の許可を得たもので、色や形などが警察官の制服と異なります。
まとめ
警備員と警察官の違いをまとめると以下の3つです。
▸警備員は民間の会社員、警察官は国や地方自治体に勤める公務員である。
▸捜査や逮捕の強制力を持っているのは警察官のみである。
▸警察官の制服は法律で決められているが、警備員の制服は警備会社によって違う。
また、警察官になるには警察官採用試験に合格し、「普通二輪免許」や「無線免許」など職務上必要な資格を取得することなど「就職の方法」が異なります。
これらのことを覚えておくと良いかと思われます。