警備中の落とし物や忘れ物(遺失物)の取り扱いは?
はじめに
警備業では、公共施設やショッピングモール、工事現場やイベント会場など屋内・屋外の様々な現場で業務を行っています。
警備中に落とし物や忘れ物を発見することも、一般の方から拾った物を届けられることもあります。
落とし物や忘れ物は、法律上では「遺失物」と呼ばれ、管理や取り扱いについては「遺失物法」という法律による決まりがあります。
今回は、警備中の落とし物や忘れ物(遺失物)の取り扱いや管理などについて解説していきたいと思います。
落とし物や忘れ物についての法令「遺失物法」
落とし物や忘れ物は、法律上で「遺失物」といいます。
遺失物については「遺失物法」という法律があり、
・落とし物や忘れ物など、持ち主の手から離れた物の拾得および返還にかかる手続き
・その他、取り扱いに必要な事項
などが決められています。
落とし物や忘れ物は〔遺失物〕、持ち主は〔遺失者〕と呼ばれます。
落とし物や忘れ物を拾った人は〔拾得者〕といい、拾った物は〔拾得物〕といわれます。
建築物その他の施設(※)の管理に当たる者が常駐するものを〔施設〕といい、施設内の落とし物は〔施設占有者(代表者・管理者のこと)〕に届ける、というルールがあります。
(※)車両、船舶、航空機その他の移動施設を含む
落とし物・忘れ物を拾った場合の一般的な流れ
落とし物を拾った場合、「遺失者」に「遺失物」を「返還」するまでの流れが決められています。
一般的な流れは、次の図の通りです。
<警察庁遺失届情報サイト『落とし物・忘れ物を拾ったら?』編>↓
https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/ishitsubutsu/otoshimono/index.html
〈お店等の施設で落とし物を拾った場合〉
〔拾得者〕施設の管理者に提出(※)➡〔施設〕警察に提出➡〔警察署・交番等〕
(※)24時間以内に提出しないと「拾得者の権利」はなくなる
〈路上等(施設以外)で落とし物を拾った場合〉
〔拾得者〕➡警察に提出(※)➡〔警察署・交番等〕
(※)7日以内に提出しないと「拾得者の権利」はなくなる
どちらも警察で3か月保管し、遺失者を探す照会調査等を行います。
・遺失者が判明しない場合➡拾得者が所有権を取得
・遺失者が判明した場合➡遺失者に返還
という流れになります。
「拾得者の権利」については、次の項目をご覧ください。
落とし物・忘れ物を届けたら発生する「拾得者権利」とは?
落とし物・忘れ物を届け出ることにより、「拾得者」としての次の3つの権利が発生します。
①遺失者に報労金を請求する権利
・遺失者が判明した場合、お礼は落とし物の価値の5%~20%の間
・駅やデパート等の施設で拾われた場合、お礼は施設と折半(落とし物の価値の2.5%から10%)
②3か月以内に遺失者が判明しない場合、物件を受け取る権利
・引取期間は2か月
・法律で所持が禁止されている物、クレジットカードや身分証明書・携帯電話など個人情報が記録されている物は除く
③物件の提出、保管に要した費用を請求する権利
・返還された遺失者に対し、落とし物の提出にかかった費用(運搬費等)などを請求することができる
・拾得者が所有権を取得した場合、警察での保管費用を負担する場合がある
届け出にあたって、
・施設(管理者のいる場所)で拾った場合、24時間以内に提出
・施設以外(管理者がいない場所)で拾った場合、7日以内に提出
しなければ、この①~③の「拾得者権利」はなくなります。
①~③のいずれかを選択して主張すること、または一切の権利を放棄することもできます。
ルール上では、財布を届け出た場合、3か月経過しても持ち主が現れないと所有権が移り、拾った人の物になる、という流れになります。
もし拾った人が届け出ないまま自分のものにした場合、「遺失物横領罪」になる可能性があります。
警備中の落とし物・忘れ物の取り扱い
警備中に遺失物を発見した場合は、一般的な流れに沿って施設管理者や警察へ届け出ます。
<警備中の基本的な対応例>
施設内の落とし物
〈例①〉警備員が業務中に拾った
〔警備員〕➡〔施設管理者〕➡〔警察〕へ
〈例②〉一般の方(お客様や利用者)が拾って、施設に届けた
〔一般の方〕➡〔施設管理者〕➡〔警察〕へ
・拾って施設に渡すことで初めて拾得者の権利が発生する
〈例③〉一般の方(お客様や利用者)が拾って、警備員に届けた
〔一般の方〕➡〔警備員〕➡〔施設管理者〕➡〔警察〕へ
・届けられたらいつ、どこで拾ったのか、名前や連絡先などを必ず記録に残しておく(拾った一般の方に拾得者の権利が発生するため)
どのパターンでも、最終的に「施設管理者」が管理し警察への届け出をすることになります。
公共施設であれば国や県・市町村などの施設管理者が、ショッピングモールやデパートなどでは、各テナント(店舗)ではなく、建物の代表者(施設管理者)が管理を行うことが基本です。
なお、施設によっては、施設管理者からの依頼で警備会社が管理を代行する場合もあります。
その際、たとえ拾得物の管理・警察への届出などを警備会社が代行していたとしても、「拾得物の権利」が発生するのは施設管理者となります。
拾得物の具体的な取り扱いや管理方法は、各施設との警備契約によって異なるため事前にマニュアルなどで確認しておくとよいでしょう。
路上や施設外(敷地の外)の落とし物
〈例①〉警備員が業務中に拾った
〔警備員〕➡〔警察〕へ
・施設の敷地外のため警察に届ける
〈例②〉一般の方が拾った
〔一般の方〕➡〔警察〕へ
・警備員の勤務時間外(休日や通勤途中)は一般の方と同じ立場のため、警察に届ける
〈例③〉一般の方が拾って、警備員に届けた
〔一般の方〕➡……(警備員は案内)……➡〔警察〕へ
・警備員は、基本的に施設外(敷地の外)の落とし物を一般の方から渡されたとき、警察署や交番に届け出てもらう案内をする
警備業は交通誘導やイベント警備のような屋外での警備も多く、現場によって落とし物の取り扱い方法が決まっている場合があります。自己判断はせず、各現場のマニュアルなどに従って対応しましょう。
<落とし物をした方への対応>
警備現場には落とし物を届けに来る方のほかに、落とし物の持ち主が探しに来ることもあります。
その際は、どのような物を、いつ、どこで失くしたのかなどを聞き取り、施設管理者や警察への案内をするなど、状況に合わせた対応をすることになります。
まとめ
落とし物や忘れ物(遺失物)の管理や取り扱いについては、「遺失物法」という法律で様々な決まりがあります。
遺失物の適切な取り扱い・管理をすることで、探している持ち主に返還できる可能性も増え、横領のリスクから守ることにもなります。
基本のルールとして
・落とし物の拾得~返還までの流れ
・拾得者の権利
などを前もって知っておくと、現場でのスムーズな対応につながるのではないでしょうか。
警備会社としては一時保管というケースになることも多いですが、落とし物・忘れ物などの管理も大切な業務のひとつとして行われています。