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警備員の制服の決まり事 「服装届」とは?

はじめに

 

警備業では、「警備業法」という法律(第16条)によって、規定の制服を着用するよう定められています。

 

警備会社は、制服の色や形など詳細を記入した「服装届」を、都道府県の公安委員会に届け出しなければなりません。

警備員が業務を行う際は、公安委員会の許可を得た服装だけ着用することが可能です。

 

今回は、警備業の「服装届」とはどのようなものか、必要な記載内容などについて解説していきたいと思います。

 

※制服全般についてはこちら「警備員の制服はとても大事!紛失した場合や返却方法など解説」

警備業の「服装届」とは

警備業では、業務で使用する制服(警備服)を都道府県の公安委員会(※1)に届け出する義務があります。

 

警備会社は、警備業法という法律の規則に従って、制服の具体的な様式を決定し、「服装届」を提出します。

服装届の届け出後、警備員は許可を得たものだけを着用することができます。

 

服装届を届け出する目的は、警備業法で、「一般の人が警察官や海上保安官と間違えることのないよう、区別ができるデザインの服装にしなければいけない」という規定があるからです。

 

警察官の制服は全国共通で、右肩にエンブレム(都道府県ごとに異なる)、左胸に階級章を付けることが決められています。

 

一方で、警備員の制服には、必ず所属する警備会社の標章(ワッペン)があり、警察官と見分けられるように作られています。
標章(ワッペン)は、色も形も警備会社ごとに異なり、胸と片腕の上部(左右の決まりはない)に取り付けられます。

 

(※1)警察を管理する機関。警察庁を管理する国家公安委員会と、都道府県警察を管理する都道府県公安委員会がある。

 

警備の制服(警備服)の種類

警備の業務は主に1号~4号に分類されており、働く現場によって警備員が使用する制服や用具が異なります。

 

<1号警備>施設警備業務
<2号警備>交通誘導警備業務、雑踏警備業務
<3号警備>輸送警備業務
<4号警備>身辺警備業務

 

・病院の建物内で巡回している、制帽と制服姿の1号警備員
・道路工事現場で、ヘルメットや夜光ベスト姿で誘導棒等を使用し、交通誘導を行う2号警備員
・銀行で、ヘルメットに防刃ベスト姿で警戒棒を持ち、現金輸送をする3号警備員
など、制服姿で働く警備員を見かけることがあるのではないでしょうか。

 

警備の制服には、現場ごとの違いもありますが、
・屋外の業務もあるため、多くの警備会社では夏用と冬用の制服が用意されている
・男性用と女性用(スカートやキュロットなど)と、制服が分かれている会社もある
といったように、様式が異なる制服があれば、それぞれ服装届を届け出する必要があります。

 

制服の着用が必須の警備員ですが、「万引Gメン」と呼ばれる私服警備員などのように、業務の内容によっては私服で勤務する場合もあります。
その際も、私服で業務を行う理由や、標章を身に着けないことについて届け出が必要です。

 

「服装届」の必要事項

服装届には実際に着用する制服を記入し、警備員が業務を始める前日までに届け出しなければなりません。

<愛知県警察『警備業法等に基づく各種申請・届出様式』>別記様式第9号『服装届出書』

 

具体的に記載する事項としては、
(1)業務で着用するアイテム4種類の詳細
➊〔頭〕……帽子、ヘルメットなど
➋〔上衣〕……シャツ、ジャケット、防寒コート、ネクタイなど
➌〔下衣〕……ズボン、スカート、防寒ズボンなど
➍〔標章(ワッペン)〕……胸部、上腕部

のほか、

 

(2)標章(ワッペン)原寸大の面積図
(3)制服の着用写真

が必要です。

 

制服の規定

服装届には、着用する制服の詳細をすべて記載する必要があるため、1枚の用紙ではスペースが足りなくなってしまいます。

 

例えば、上衣の場合、
「上衣、えり、肩章、前面と後面、そで、ネクタイ」など、それぞれの色や形、ポケットやボタンの数・取り付け位置なども記入します。
また、「前面・後面」など図の記載も必要です。

 

そのため、1枚目の届出書には「別紙のとおり」と記入し、

 

●「別紙1」服装や標章(ワッペン)の詳細
●「別紙2」標章(ワッペン)原寸大の面積図
●「別紙3」制服の着用写真(正面・側面)

のように、それぞれ分けて記載し、添付するのが一般的です。

 

【記載例(一部)】
別紙1
<型式>▶「1号制服(夏用男子制服)」
〔上衣〕▶「シャツ・水色(右図のとおり)」
(例)「前面=中央に紺色ボタン5個を1行につける。左右の胸部にポケット各1個をつけて、ふたの中央を紺色ボタン各1個でとめる。」

 

このように、制服一式につきボタンの数や取り付け位置まで細かく届け出するため、破損や、ボタン・付属品の紛失など、服装届と異なる状態になってしまった場合には、速やかに会社に伝えましょう。

 

ボタンなどが取れてしまっても破棄せず保管し、私物のボタンに付け替えることなどしないよう注意が必要です。

 

標章(ワッペン)の規定

警備業では、制服だけではなく、標章(ワッペン)についても規定があります。
警察庁の「警備業法等の解釈運用基準(※2)」により、警備会社の名称を表示した標章(ワッペン)を、上着の胸と上腕部に取り付けることが決められています。

 

大きさは60㎠(平方センチメートル)以上と定められており、届け出が必要です。
標章(ワッペン)の原寸大図には、胸部・上腕部ともに、それぞれ①原寸大の図、②寸法、③面積の計算(60 ㎠以上であることを示すもの)を記載します。

 

(※2)警察庁が警備会社に対して指導という形で出している規定。

 

着用写真の規定

服装届と同じ様式の制服を着用した警備員の、正面・側面(ワッペン取付け側)の写真も、届け出に添付が必要です。

 

正面・側面ともに無背景のカラー写真(縦 12 ㎝×横8㎝)を貼り付けるよう決められています。

 

警備員の服装には、事故や犯罪の防止、注意喚起などの効果があるため、制服や標章(ワッペン)が周囲に見えることが求められます。
着用写真のとおりに制服を身に着ける必要があるため、

 

・個人で自由に着方をアレンジ
・指定以外の私物を着用
・暑さや寒さ対策のため制服自体を改良
するなど、服装届と異なる着方をしてしまうと法律違反になるので注意しましょう。

 

夜光ベストなどの警備小物は、着用写真には原則として不要ですが、別途、服装届の提出が必要になる場合があります。

 

また、現金輸送(3号業務)や身辺警護(4号業務)を行う会社では、「服装届」に加えて、身を守るための防弾・防刃ベストや警戒棒といった護身用具も装備することを「護身用具届出書(※3)」という専用の書類で届け出を行います。

 

(※3)護身用具を使用する業務の場合は、『護身用具届出書』に、護身用具の「種類」や「材質」、「長さ」や「重さ」など詳細を申告し、公安委員会の許可を得る必要がある。

 

警備小物について(標章付きのもの)

警備小物(夜光ベスト、雨の日のカッパなど)や、その他の着用物について、服装届の申告が必要なものがあります。

 

警備業法では、「標章が付いているもの」に関しても、届け出をすることが定められているからです。標章付きのカッパや防寒コートを着用する場合は、届け出の対象になります。

 

屋外の警備は天候の影響を受けやすいですが、暑い日に上着を脱いだり、寒い日に会社指定の防寒着の上に重ね着をしたり、標章が隠れてしまうカッパなどを着用することはNGです。

 

暑さ・寒さ対策はそれぞれインナーなどで調節し、透明レインコートの活用など、周囲に警備員だと分かるような服装を意識し、自分の体調管理にも気をつけましょう。

 

服装の変更は「服装(護身用具)変更届出書」を提出

「服装届」の申請後に、服装の変更を行う場合は「変更届」の提出が必要になります。

 

<愛知県警察『警備業法等に基づく各種申請・届出様式』>別記様式第11号『服装(護身用具)変更届出書』

 

『服装(護身用具)変更届出書』(護身用具と兼用の書類になっている)には、具体的に変更する事項を、「新」・「旧」の欄にそれぞれ記載します。

 

例えば

・男性用制服のシャツの色を白から水色に変更
・真夏の熱中症対策に、ファン(扇風機)付き作業服を会社制服として追加
・女性用ズボン・スカート・キュロットから、キュロットのみ廃止
など変更・追加・廃止があった場合、その都度、届け出が必要です。

 

警備員の制服や用具は、主に警備会社からの貸与になりますが、手入れや管理は基本的に各自で行います。

 

制服の変更があった場合や、短期間のアルバイト、退職時など着用しなくなった場合、最終的に貸与品は会社に返却することになります。

 

なお、靴については各自で用意する場合がほとんどです。特に会社の指定がない場合は、黒の革靴や安全靴を個人で用意しましょう。

 

まとめ

警備員は、警備会社が公安委員会に届け出し、許可を得た「服装届」や「服装変更届」のとおりに制服を着用して、業務を行うよう決められています。

 

着用の際には、警備員だと周囲に分かるように、制服や標章が見えるよう気を付けることが重要です。

 

様々な現場がある警備業ですが、勤務前には、どのような様式の制服を着用するのか、会社の服装の規定をしっかり確認しておきましょう。