警備員の変形労働時間制について
はじめに
一般的な働き方だと、決まった時間に仕事を始めて決まった時間に終わる「1日に8時間勤務の週5日制」のペースで働くことが多いと思います。
しかし、警備員の働き方は必ずしも同じペースでシフトが組まれているわけではありません。
24時間連続で勤務するというのも珍しくないのです。その場合、一日当たりの残業代で計算するとコストが大変かかるために変形労働時間制を採用する警備会社が多いです。
では、その働き方について考えていきましょう。
変形労働時間制とは
勤務時間を1日という単位で算出するのではなく、週・月・年など一定期間の中で調整するという制度です。労働基準監督署の許可を得て監視や断続的な労働に従事する場合(※)は、例え1日8時間、週40時間以上勤務していても時間外労働とは認められません。時間外労働の割増率の1.25倍にならないだけで働いた分の通常の賃金は支払われますので安心してください。
※1、監視業務とは?
監視をすることが主な業務で身体的あるいは精神的な緊張はほとんどない業務のことです。マンションの守衛やパーキングメーターの監視員などがあります。
※2、断続的な労働とは?
拘束時間のほとんどが待機であり労働することがほとんどない仕事のことです。危険な現場の業務ではなく身体的な緊張感のない業務のことを指します。例えば巡視や施錠などです。
警備員の労働形態とは
警備員は現場に出ている時間はすべて稼働時間とみなされることがあります。具体的に言うと、24時間勤務で8時間の仮眠があった場合は仮眠の時間は労働時間に入ります。緊急事態が起きたらすぐ出動しなければならない休憩(待機時間)なので労働時間とみなされているわけです。
また、監視業務や断続的な労働(大半が待機で労働する時間がほとんどない労働)は残業代が出ない場合があります。理由としては肉体的な疲労や精神的な疲労がない監視や待機が大半とみなされているからです。
変形労働時間制での給料の計算の仕方
週払いの場合は1週間単位の計算、月給制なら1か月単位での算出方法、年俸制なら12か月を分割するような1年単位での計算になります。
〇1週間単位での変形労働時間制
1週間の法定労働時間が40時間と規定されているために、40時間を超える場合は残業代が発生します。
〇ひと月単位での変形労働時間制
日数ごとに労働時間が規定されています。
28日、160.0時間
29日、165.7時間
30日、171.4時間
31日、177.1時間
これを超える場合は残業代が発生します。
〇1年単位での変形労働時間制
365日、2085.7時間
366日(うるう年)、2091.4時間
これを超える場合は残業代が発生します。ただし、警備会社で年俸制を採用しているところはほとんどありません。
変形労働時間制は、1年単位にひと月間まるまる休ませて繁忙期に休みなしなどの極端な働かせ方を防止するために次のように決められています。
・1年あたり280日の労働日数
・1日あたり10時間までの労働時間
・1週間あたり52時間までの労働時間
・連続の労働勤務は6日まで
・1週間につき1日休みを入れること
変形労働時間制のメリットとデメリット
変形労働時間制のメリット
会社にとってのメリットは、忙しい時期とそうでない時期を事前に想定して働き方を変えられることと労働時間を調整できることです。忙しいときにしっかり働き、そうでないときは労働時間を短くしたりすることで、働く人の健康を維持することにも繋がります。
働く側にとってのメリットは、繫忙期の労働時間は長く、閑散期の労働時間は従来より短く設定されているので、メリハリをつけて仕事ができることです
メリハリのある働き方ができ休息やプライベートな時間を充実して過ごせます。
変形労働時間制のデメリット
繫忙期は1日10時間勤務など長めに設定しているために8時間超えても残業代は出ません。また、繫忙期は8時間以上の長時間勤務が続くので心身ともに負担が大きいです。
警備員にとって忙しい時期
工事現場の繫忙期
年末や年度末に国や地方自治体が予算消化のために公共工事が増えます。11月~3月に朝も夜も工事をしているところを見かけることが多くなります。それに伴って警備の仕事が増えるのです。閑散期は新しい年度が始まる4月~ゴールデンウイーク明けくらいまで続きます。最近では忙しさを均一にするために発注する時期を工夫している自治体もあるようです。
リゾート地の警備の繫忙期
冬のリゾート地ならスキーやスノーボードを楽しむ季節の11月~3月にかけてですし、
夏のリゾート地の海やプールを警備するのであれば7月~8月が繫忙期です。リゾート地の警備の場合、シーズン中は忙しいですが繫忙期が終われば施設が閉鎖されて仕事が全くなることがあるので時期によって働く場所を変える工夫が必要になります。
ショッピング施設やテーマパークの繫忙期
デパートなどの商業施設や動物園や水族館、遊園地などの行楽地は家族連れや友人同士の利用が増える長期休暇、具体的に言えば7月~8月の夏休みや年末年始の冬休み、3月末ごろの春休みです。反対に梅雨の時期や10月~11月が閑散期になり仕事が落ち着いてきます。
繫忙期や閑散期のない現場もあります。
病院やオフィスビルなどは1年中人の流れが変わらないので年間を通して継続的に仕事をしたい人にとって働きやすいと思います。
しかし、繁忙期だからといってすべての警備員に仕事が回ってくるとは限りません。特に工事現場など危険が伴う現場では、忙しい時期の仕事は上手にこなせる人が求められているからです。警備員を続けるつもりなら閑散期のころから経験を積んで余裕をもって仕事ができるように準備しておくと良いでしょう。
まとめ
変形労働時間制のことを知っておくと、警備員として働くときに役に立つと思います。
警備員の働き方を知ることで、より警備という仕事を身近に感じていただけたら幸いです。