高速道路での大旗の合図について
はじめに
警備業の2号業務と呼ばれる「交通誘導警備」の仕事のひとつに、誘導の旗振りがあります。
誘導業務を行う警備員は、交通誘導員・誘導員と呼ばれています。
雨天時や夜間には誘導灯を、雨の降っていない昼間には、主に一般道路では手旗、高速道路では大旗が使用されます。
今回は、高速道路での交通誘導と、大旗の基本的な合図・旗の振り方についてご紹介していきたいと思います。
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高速道路での交通誘導
一般道路において合図を行う場合、手旗や誘導灯を使用する方法、素手(白手袋)による方法などがあり、現場や状況によって道具は異なります。
手旗は雨が降っていない昼間に用いられ、誘導灯は夜間など視界が悪い場合に使用されることが多いです。
高速道路では、手旗と同じく、昼間の雨が降っていないときに大旗(黄色や蛍光色が多い)が使われます。
一部の対面通行区間(※1)を除いて、高速道路では車両がすれ違うことはありません。工事区間の前と後ろを監視しながら、車両を順番に進行させることがないのが一般道路との違いです。
(※1)交通量が少ないなどの理由から、暫定的に上下線が隣り合っている(2車線)区間のこと。
大旗が使用されるのは、一般道路よりも車両のスピードが速い高速道路で、相手に分かりやすいように合図を送ることが重要だからです。
高速道路での旗振り
高速道路で工事がある際には「通行止めにする」場合と、「通行止めにしない」場合があります。
工事で「通行止めにする」場合
高速道路の一定区間が通行止めになります。
一般車両が進入できないようにするのは、安全な作業スペースを確保して工事をするためです。
警備員は通行止めの区間内で交通誘導を行います。
主な業務内容は、通行止めの区間内を出入りするトラックなど工事車両の誘導です。
現場の状況に合わせて工事区間への車両の進入・退出、適切な位置への誘導を行います。
工事通行止めの場合、一般車両は迂回路を走行することになるため誘導の必要はありません。
ただ、作業員が働く中、工事車両が頻繁に出入りするので、区間全体の安全に気を配る必要があります。
工事で「通行止めにしない」場合
通行止めにはせず、高速道路の一部が工事区間となります。
警備員は工事区間に関連する交通誘導を行います。
主な業務内容は次の2つです。
- 工事区間を出入りするトラックなど工事車両の誘導
- 工事区間の横を通行する、一般車両への注意喚起・車線変更の誘導など
この場合は、工事車両と一般車両の両方に意識を向ける必要があります。
工事区間の安全を確保するために、車線を矢印板やコーンなどで仕切って規制を行うことを「車線規制」といいます。
警備員は大旗を振って、車線の減少をドライバーに知らせたり、注意喚起を行ったりします。
その際には、相手にはっきりと分かりやすい合図を送ることが求められます。
大旗の合図
基本的な大旗による合図の方法は、次の4種類です。
- 停止(止まってください)
- 進行(進んでください)
- 幅寄せ
- 徐行
大旗の振り方
- 停止の合図(旗2本)
(1)〔両手〕に大旗を持ち、体を車両の方向に正対させる。
(2)〔両手〕に持った大旗を、側頭部に沿って垂直に上げ、数回交差させる。
(3)大旗を肩の高さと水平に下ろす。
- 進行の合図
(1)〔右手〕に大旗を1本持ち、体を車両に対して、やや半身にする。
(2)進行方向の安全を確認する。
(3)車両に注視し、大旗を体と平行に車両の方向へ向ける。
(4)大旗を大きく円を描くように体の前を通し、車両の進行方向へ45度振る。
- 幅寄せの合図
(1)体を車両の方向に、やや半身にする。
(2)〈車両から見て右に寄せる場合〉〔右手〕の旗を垂直に上げ、車両を注視しながら、右から左(頭上から肩の高さ)に向かって大きく円を描くように振る。
〈車両から見て左に寄せる場合〉〔左手〕の旗を垂直に上げ、車両を注視しながら、左から右(頭上から肩の高さ)に向かって大きく円を描くように振る。
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- 徐行の合図
(1)大旗を1本持ち、体を車両の方向に正対させる。
(2)車両を注視し、旗を〔両手〕で広げて頭上に上げ、ゆっくり上下に繰り返し振る。
〈参考文献:「交通誘導警備業務の手引」社団法人全国警備業協会(2008)〉
まとめ
今回は、高速道路における交通誘導と、大旗の合図についてご紹介しました。
基本的な大旗の合図は、①停止(止まってください)、②進行(進んでください)、③幅寄せ、④徐行の4種類です。
工事によって高速道路の一定区間を通行止めにする場合は、区間内の工事車両の誘導を行います。
通行止めにしない場合(高速道路の一部が工事区間となる)には、工事車両と一般車両の両方の誘導を行います。
高速道路での交通誘導は一般道路よりも車両のスピードが速いため、相手に明確な合図を送ることが重要です。
工事車両や工事作業員、一般車両の安全を守るとともに、自分自身の安全にも気をつけて業務を行いましょう。