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警備員がやってはいけないこととは?警備業法15条の概要と違反行為について解説

手のひらを見せる警備員

警備員は、施設やイベントの安全を守る上で欠かせない存在です。しかし、「どこまでが警備員の仕事なの?」「警察官との違いは?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

実は、警備員の権限や業務範囲は「警備業法」という法律で明確に定められています。とくに、警備業法第15条(警備業務実施の基本原則)は、警備員ができることとできないことの線引きを示す重要な条文です。

今回は、警備業法第15条の概要から、警備員が「やっていいこと」「やってはいけないこと」を具体的に解説します。警備の仕事に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

警備員の権限や業務範囲は「警備業法第15条(警備業務実施の基本原則)」で定められている

ガベル

警備員の業務は、警備業法という法律によって厳格に定められており、とくに「警備業法第15条(警備業務実施の基本原則)」は、警備員の権限と業務範囲を理解する上で重要な条文です。

警備業法は、警備員や警備会社が遵守すべき基本的なルールを定めたもので、その中でも第15条は警備員が「警察官の職務を妨げ、またはこれに代わるべきものではない」ことを明確にしています。つまり、警備員は警察官のような強制力のある権限を持たず、その役割が根本的に異なることを意味します。

この条文があることで、警備員が行き過ぎた行為を行うことを未然に防ぎ、市民の安全と権利を守る役割も果たしているのです。

 

警備員がやっていいこと

警備員は、警察官とは異なる役割を持ちながらも、私たちの日々の安全を守るために重要な業務を遂行しています。警備員が法的に認められている主な業務内容は以下のとおりです。

 

危険防止のための交通誘導

警備員による交通誘導は、主に工事現場やイベント会場などで見られます。これは交通の流れをスムーズにし、歩行者や車両の安全を確保するためのものです。あくまで交通の「誘導」であり、道路交通法に基づく強制力を持つ「交通整理」とは異なります

例えば、青信号でも車両を停止させたり、青信号で歩行者を止めたりするような行為は交通整理にあたるため、警備員には許されていません。

 

施設管理権の範囲内による声掛け・入館拒否

商業施設やオフィスビルなどの私有地では、その施設の管理者が「施設管理権」を持っています。警備員は、この施設管理権に基づき、不審者への声掛けや、施設の規則に従わない者の入館拒否を行うことができます

例えば、営業時間外に侵入しようとする者や、危険物を持ち込もうとする者に対しては、入館を拒否したり退去を求めたりすることが可能です。これは、施設内の安全と秩序を維持するための正当な業務です。

 

現行犯の取り押さえ(私人逮捕)

警備員も一般市民と同様に、犯罪の現行犯に遭遇した場合は、その犯人を取り押さえる「私人逮捕」ができます

現行犯逮捕は、刑事訴訟法第213条で認められている権利であり、警察官以外の者でも行うことが可能です。ただし、逮捕後は直ちに警察官に引き渡す必要があり、その場で取り調べを行うなどの行為は許されていません。また、過度な実力行使はかえって問題となる可能性があるため、注意が必要です。

警備の仕事は、人々の安全を守るやりがいのある仕事です。警備のMTでは未経験から警備員としてキャリアをスタートすることが可能です。教育体制やサポート体制が充実しているため、警備員として働くことに興味がある方は、ぜひ警備のMTまでご相談ください。

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警備員がやってはいけないこと

警備員にはやってはいけないことも存在します。これらの行為は、警備業法に抵触するだけでなく、個人の権利を侵害する可能性もあるため、厳しく禁止されています。

 

強制的な交通整理

先でも述べたように、警備員ができるのは交通誘導であり、強制力をもって交通を制御する「交通整理」はできません。信号機の代わりに指示を出したり、一時停止の標識がない場所で車両を強制的に停止させたりする行為は、警察官の職務に限定されています。
警備員はあくまで交通の流れを「促す」立場であり、信号や交通標識の指示を上書きする権限はありません

 

遺失物(落としもの)への対応・管理

施設内で落としものが見つかった場合、警備員が一時的に預かることはありますが、遺失物の対応や管理を最終的に行うことはできません。落とし物に関する業務は、遺失物法に基づき警察が管轄しており、警備員は発見された遺失物を速やかに警察に届け出る義務があります。警備員が落とし物を持ち主へ直接返還したり、長期間保管したりすることは原則としてできません。

 

職務質問

街中で不審な人物に対して、警察官が身分確認や所持品検査を行う「職務質問」を目にすることがあるでしょう。警備員にはこの職務質問を行う権限はありません。
職務質問は、警察官職務執行法に基づいて警察官にのみ認められた行為であり、警備員がこれを行うと不当な拘束やプライバシーの侵害にあたる可能性があります

 

取り調べ

警備員は現行犯逮捕(私人逮捕)が認められていますが、犯人を警察に引き渡す前に供述を強要したり、詳細な事情聴取を行ったりする「取り調べ」は厳しく禁じられています。取り調べは司法警察職員または検察官のみが行える行為であり、警備員がこれを行うことは、個人の自由を侵害する行為となります。

 

通常逮捕・緊急逮捕

繰り返しになりますが、警備員が行えるのは犯罪の現行犯に対する私人逮捕のみです。警察官が裁判所の令状に基づいて行う「通常逮捕」や、重大な犯罪で緊急性がある場合に行う「緊急逮捕」は、警備員には許されていません。これらの逮捕には、明確な法的根拠と厳格な手続きが必要とされます。

 

警備業法に違反するとどうなるか

警備員が警備業法に違反する行為を行った場合、個人だけでなく、所属する警備会社にも重い処分が科せられます。法律遵守は、警備業界で働く上で最も基本的なことです。

 

罰金や営業停止処分を受ける

警備業法に違反した場合、違反行為の内容によっては罰金が科せられることがあります。また、警備会社に対しては、一定期間の営業停止処分が下されることもあります。これにより、会社の信用が失墜し、事業継続が困難になるケースも少なくありません。
とくに、社会に与える影響が大きい重大な違反行為に対しては、厳しい処分が課せられます。

 

5年間、警備員として働けなくなる

警備業法に違反し罰金刑以上の刑に処せられた場合、その者は5年間、警備員として働くことができなくなります。これは、警備員の資格を剥奪されることに等しく、警備業界でのキャリアを大きく損なうことになります。
警備員は人々の安全と財産を守るという重要な使命を担っているため、高い倫理観と法律遵守が求められるのです。

 

警備業法第15条とは別!警備中にやっていいこと&やってはいけないこと

◯マークをこちらに向けるスーツの男性

警備業法第15条は警備員の権限の範囲を定めていますが、日常的な業務の中には法律で明文化されていなくても社会的な常識や契約内容に基づいて「やっていいこと」と「やってはいけないこと」が存在します。

ここでは、広義的な意味でのOK・NG行為について解説します。

 

やっていいこと

警備員がやっていいことは、以下のとおりです。

 

水分補給を行う

屋外での警備業務や長時間の立哨警備などでは、熱中症予防のためにも適度な水分補給が欠かせません。
ただし、お客さまや来場者の目に触れる場所で、だらしない態度で水分補給を行うのは避けるべきです。

 

トイレに行く

尿意や便意は人間として当然の生理現象であり、適切なタイミングでトイレに行くことは許されています。
しかし、持ち場を離れる際は必ず上長や同僚に連絡を取り、警備に穴が開かないよう配慮が必要です。

 

電話に出る

業務上必要な連絡や、緊急時の連絡であれば電話に出ることは問題ありません。
ただし、長時間に及ぶ個人的な通話や、業務に関係のない私的な連絡は避けるべきです。とくに、業務中にスマートフォンを操作することは、警備の妨げとなる可能性があるため望ましくありません。

 

やってはいけないこと

警備員がやってはいけないことは、以下のとおりです。

 

警備会社の請負契約にあてはまらない業務

警備会社とクライアントの間には、具体的な警備内容を定めた請負契約が存在します。警備員が、この契約の範囲外の業務(例:清掃、案内、販売促進活動など)を行うことは「偽装請負契約」とみなされ、労働者派遣法違反となる可能性があります。警備員は、あくまで契約で定められた警備業務に専念する必要があります

 

指定場所以外に私物を保管すること

警備現場では、セキュリティ上の理由から、私物の持ち込みや保管場所が厳しく定められていることがほとんどです。指定された場所以外に私物を置いたり、ロッカーを使わずに放置したりすることは、セキュリティリスクを高めるだけでなく、施設の美観を損ねる原因にもなります。

 

公共の場での着替え

警備員の制服は、所属する警備会社や職務を明確にする重要なものです。人目に触れる公共の場所で制服に着替えたり制服を乱れた状態で着用したりすることは、警備員の品位を損ねるだけでなく、会社の信用にも影響を及ぼします。着替えは必ず指定された場所で行いましょう。

 

制服を着用しないこと

警備員が警備業務を行う際は、その身分を明らかにするために制服の着用が義務づけられています。これは警備業法第16条によって定められており、警備員であることとその権限の範囲を明確にするために必要です。規定の制服を着用しないことはこの法律に違反する行為であり、厳重に取り締まりの対象となります

警備員の制服に関する詳しい情報は、こちらの記事もご参照ください。

警備員の制服の決まり事 「服装届」とは?

警備のMTは、警備業界が初めての方も安心してスタートできる環境が魅力です。充実した新人研修と経験豊富な先輩による丁寧な指導で、基礎から着実にスキルを習得できます。困ったときにすぐに相談できるサポート体制が整っているため、無理なく長く働けます。警備員の仕事に興味がある方は、ぜひ警備のMTまでご連絡ください。

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まとめ

警備員の業務は警備業法、とくに第15条によって厳しくその権限と範囲が定められています。警備員は、警察官のような強制的な権限を持たず、交通整理や職務質問、取り調べなどを行うことはできません。一方で、危険防止のための交通誘導、施設管理権に基づく声掛け、現行犯の私人逮捕などは、法的に認められています。

警備の仕事は、人々の安全を守るという大きなやりがいと責任を伴います。そのためには、法律や社会的なルールを正しく理解し、常にプロフェッショナルとしての意識を持って業務にあたることが大切です。

警備のMTは、愛知県名古屋市を拠点に施設警備や交通誘導・雑踏警備などを行う警備会社です。愛知県や岐阜県、北海道に営業所があり、各拠点でさまざまな警備業務を請け負っています。
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